いつも笑いを提供するあの人

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

いつも笑いを提供するあの人


お寺にいるチリ人の御講師

私は28歳のフリーターの女性です。この夏のエピソードをお話しします。

私は毎日近所のお寺に通っています。そこには、40代前半のチリ人の御講師(私たちの宗旨は、お坊さんのことを御講師とお呼びする)がいます。このお寺では、お盆の恒例行事として、御講師が宗派の教えを解説するお話を信者が聴聞する機会があります。ちょうどこの夏は、お盆に関連したお話でした。

チリ人御講師は、まずお話の冒頭で「お盆」というキーワードと引っ掛けてアキラ100%の話をし始めました。これには思わず、お話を聞いていた私を含めたほぼ全員が吹き出してしまいました。確かにアキラ100%は「お盆」を使った様々な動きで男性の大事なところを隠しているわけですが、もちろんその日のお話の内容には全く関係がありません。それどころか、これはもっとシリアスな講演なのです。

事実、その日の担当御講師3名中他の2名の話には、笑いの要素は全くありませんでした。むしろ、話す側だけでなく聴く側も真剣で、一心に耳を傾けてメモを取るような雰囲気なのです。そんな中での突然のアキラ100%のお話に、みんな意表を突かれたこともあり、おかしくて吹き出してしまいました。

いつも笑いを提供する彼

このチリ人御講師は、いつもシリアスな雰囲気などどこ吹く風で、どこかに笑いの要素を取り入れてくるのです。もちろん大切なことはちゃんとおっしゃいますが、家族のお話だったり、自分の体験したことだったり、今回みたいにアキラ100%だったりと、どこかしらに笑いのネタを取り入れてくるので、聞いている側は皆、爆笑とはいきませんが思わずクスリと笑ってしまうのです。

彼のこんな様子は、彼自身の性格によるものなのかお国柄かによるものなのかは分かりませんが、他の日本人の御講師とは明らかに違う雰囲気を持っていて、外国人らしいなと思っています。

ちなみにこのチリ人の御講師は、元々空手を習うために日本にやって来たのだそうです。そしてある日本人から「空手を教える師匠がお寺にいるから、まずはそのお寺に行きなさい」と言われてお寺に行ったものの、いつまで経っても空手の先生は現れず、そのうちについに入寺。そして気づけば御講師としての職に就職してしまったのだそうです。

このチリ人御講師には、嘘みたいな本当のお話が沢山あって、そんな話を聞くたびに笑ってしまいます。

そんな彼にも大変な経験が

そんな陽気な彼ですが、日本で大変な苦労をしたこともあります。実は彼は去年まで生魚・生肉を食べたことがなかったのだそうです。元々チリ人には日本人とは違って生肉や生魚を食べる文化がなかったのです。

ですから、去年までは、信者の家を訪問した際に、ご厚意でお刺身を出されても、気持ちが悪くて手をつけることができなかったらしいです。彼からすれば、お刺身は「魚を生で食べる」という恐ろしい未知の領域であり、これを美味しそうに食べる日本人の姿が不思議で仕方がなかったことでしょう。

ですが、そんなある日、彼は同僚の御講師と共に焼き鳥屋へ入り、その流れでついに鳥の刺身をいただいたのですが、その時たまたま体調不良だった彼は、鳥の刺身を食べたのが原因でギランバレー症候群になって入院してしまいました。(今は退院してリハビリの最中ですが、以前と同じように元気にしています。)

生肉や生魚を食べる日本人の体内には当たり前に存在する免疫力が、日常的に生魚や生肉を食べたことがなく、ましてや初めて生物を食べたチリ人の彼にはなかったのでしょう。これはとても気の毒な話でした。

そんな病気にもめげずに毎日、一生懸命でかつユニークでお茶目なこのチリ人の御講師が私は大好きです。これからも仲良くしていきたいと思っています。