インド人の日本語暗記法

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

インド人の日本語暗記法

初来日したインド人の夫

私は37歳で会社員の日本人女性です。夫は来日6か月のインド人で27歳。彼にとっては初めての来日で、しかも日本の知識は全くなく、わかる日本語も全くない状態で新婚生活を今年スタートさせました。

夫は日本に来てからやっと日本語を勉強し始めるというのんびりさん。とにかく挨拶だけでも教えないと仕事が見つけられません!まずは「おはようございます」「よろしくおねがいします」「おつかれさまでした」を毎日、オウムのように繰り返し繰り返し、私が夫にひたすら語り掛ける日々を過ごしました。

あるオーディションにて

来日約3か月後のある日、夫にオーディションのチャンスがあり、先方さんのお計らいで、通訳として私も同席させていただけることになりました。オーディション本番、ハラハラする私の横で夫は、前の晩に必死に練習した自己紹介を無事に終えることができました。これであとは「よろしくおねがいします!」と言えば終わる!と、私が安心して気を抜いてしまった次の瞬間、なんと夫は「ジュラシックおねがいします!」と、訳の分からないことを言ったのです!

面接官をされていた方は、一瞬「え?」とフリーズ。私も同じく「…?え?」とフリーズ。そして本人だけが満面の笑顔。面接官の方は「(今のはそら耳?)あ、ああよろしくおねがいします」と返事はしてくださったものの、私は血の気が引いて目の前真っ暗になりました。

部屋を退出したあと、「さっき『ジュラシックおねがいします』って言ってたけど、あれなに?」と夫に聞いたところ、夫曰く「日本語むつかしくてさ、よく覚えられなくて。昨日ジュラシックワールドの映画を見てた時に、『君がいった言葉(よろしく)とジュラシックって音が似てるなー』と思って、『ジュラシックおねがいします』っ言ってみたら、すげー覚えやすかったし、なんか早く言ったら多分日本語っぽく聞こえるだろうと思って。」とのこと。

いやいやさすがに、無理があるだろうと思っていたら、さらに「おつかラディンでしたでしょ?ジュラシックおねいしますでしょ?日本語たくさんおぼえたよ!」と…。夫は語学が苦手(私も人のことは言えない)なのはわかっていたけど、「おつかラディン」はさすがにひどい、100歩譲って「ジュラシックおねがいします」は早口で何とかなるかもしれないけど、「おつかラディン」はないだろう。とりあえず「なんでラディンなの?」と聞いてみたところ、「いや~試しにおつかラディンでしたって言ってみたら、君が言ってた発音に近く聞こえたから、これはいけるなと思って!」

だいぶ無理のある日本語暗記法

いやいやいや!すごい無理があるんですけど!勝手に日本語を作らないでください!と思い、夫には「それはかなり無理があるよ。」と伝えたのですが、「え?みんなちゃんと笑顔で返事してくれるし、意味通じてるでしょ?日本人は優しいよね。みんな笑顔で僕の話聞いてくれるし。」と、聞く耳を持ちません。周りの人は笑顔なわけではなく、「おつかラディン」と聞いて驚いてただひきつってるだけなのでは?と思いながらも、その辺はスルーさせてもらいました。

今ではだいぶ日本語も覚えましたが、「ジュラシックおねがいします。」と「おつかラディンでした」だけは直らず、また「つ」の発音が「ちゅ」になることも判明。いつになればちゃんと話せるのかな?と不安になる日々です。

ただたまに、「君の日本語変じゃない?時々変な言葉はなしてるよね?」との突込みが入るようになりました。テレビでニュースをよく見ているせいか、聞き取りはだいぶできるようになった夫は、私が時々使う方言が気になってきた様子です。すまん夫よ、多分私が本気で地元丸出しにするとあなたは全くわからないと思う。あなたが日本語をマスターしたら、次は私の故郷の方言も覚えてくれ!

外国人にとって、日本語の発音は本当に難しいのだな~と日々実感しています。これからもまだまだ日々不思議な造語が増えていきそうで、ひそかに楽しみにしています。