外国人、初めての回転寿司

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

外国人、初めての回転寿司

タイ人の友人が話してくれた、回転寿司の感想

私は今現在サービス業で働く34歳ですが、以前タイにいたこともありタイ人の友人幾人かとは今も連絡を取り合っています。これからお伝えするエピソードは、そんなタイ人の友人のひとりが初めて日本に遊びに来た、2012年春の出来事です。

当時私は29歳で、日本系列のホテルに勤めていました。友人は普段タイで服飾の小売業をしている女性で30代半ばだったと思います。まだ日本の観光ビザを取得するのは困難と言われていた時でしたが、ビザを取得することができ、晴れて日本に遊びに来ることになったということで、私と彼女は東京で会う約束をしていました。彼女は既に大阪でいくらか観光した直後での私との再会だったので、それまでの旅道中での出来事を話してくれました。そのうちの一つです。

一般的に、タイ人は私の友人に限らず食べることが大好きです。彼女もその例に漏れず、日本に来たからには日本の食事を楽しもう!と、さっそく大阪で食道楽を楽しんできたようです。日本食のイメージは、大阪ならではのたこ焼きなどの食べ物というよりも、やはり定番の握り寿司だったのか、それとも何かとても大きなインパクトがあったのか、詳しいことはわかりませんが、とにかく回転寿司のお店のことを話し始めました。

味を語ると思いきや…

寿司のおいしさを表現してくれるのかと思いきや、店の様子について教えてくれました。というのは、お店で働く店員さんたちの様子に驚いたのだそうです。来店時の「いらっしゃいませー!!」、会計を済ませた後の「ありがとうございましたー!!またお越しくださいませー!!」といった、まるでやまびこのように呼応する店員さん達の大きな声に加え、1,2秒後に真顔になる作り笑顔。

殊にタイ語は日本語と違い声調や発音の仕方に区別がある言語で、日本人の私では聞き分けることができない音の違いにタイの人は敏感に反応し聞き分けるだけに、お店に入った瞬間の「いらっしゃいませー!!」の独特の連呼には冷静を装いつつも内心かなり度肝を抜かれたようで、そのように声を張り上げる店員さんの前だとなんだか落ち着かなかった、と言いつつ何回も真似して聞かせてくれました。

「タイではあんなにきちんとやる人はいない。日本人は仕事に対してまじめで誠実だよね。なんであそこまでできるんだろうか。」と、日本の接客に驚きながらも感心した面持ちでその時の様子を教えてくれました。

不自然だけれどハッとする日本人の接客態度

日本人の私からすると、彼女のその観点と反応が意外でした。「食べ物よりもまずそこから驚きだったのか。」と。でも思い返すと、タイの接客サービスでは日本のような掛け声はまず見られません。外食チェーン店でもマニュアルはあるのかもしれませんが(6時になるとホールスタッフが通路に並んで一同にお店の曲で踊るチェーン店はあります。それでもスタッフの人は恥かしさや、テキトー感の入り混じった笑顔とゆるさで踊ってます)、「不自然」なまでの接客に会うことはまずありません。それは至極自然体の接客であり、ともすると日本人にとっては無愛想でやる気のないように映ることもなきにしもあらず。でもこれは逆を言えば、常に自然な接客の中で生活しているタイの人たちからしてみれば、日本の接客業は不自然に見えつつもハッとさせられる一徹さが詰まっていて、そこにタイの人は日本人の仕事に対する真面目さ、ひいては秩序正しさを見るのだと思います。

私がタイの人と話していて日本人についてよく言われるのは「真面目さできちんとしていて、秩序正しい」ことです。例えば、時間に正確であること、掛け声でも服装でも行動においても揃っていること、自ずと列ができて乱れることも無くみんな順番を守りつづける、といったことです。でもタイはタイで、列がなくても順番がずれてもとやかく言わないし、違っていることが前提の上でそれなりにまとまっています。真面目さ・秩序正しさは忘れずにそんな寛容さも備えもつことができたらいいなと思います。