イスラム教徒の友人との交流

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

イスラム教徒の友人との交流

タイ人留学生だった友人

私が大学生だった頃に知り合った同い年のタイ人留学生の女の子とのエピソードです。
私にはそれまで外国人の友人はいなかったのですが、そのタイ人留学生とは、たまたま大学の手話サークルで一緒になり、サークル活動を通して次第に会話をするようになりました。彼女は日本語を勉強中でしたが、日常会話は普通にできたのでコミュニケーションを取るのに困った記憶がありません。

そのサークルはみんな仲が良く、ときどき飲み会等がありました。そこである日、彼女を飲み会に誘ってみたところ、少し表情が曇りました。どうしたのか理由を聞いてみると「私はイスラム教徒だから、みんなと同じものを食べたりできない」と話してくれました。同じ理由で、彼女は日本ではあまり外食をしていないとのことでした。

そこで私はひとつの提案をしてみました。それは、彼女の住んでいるアパートでホームパーティーをしようというものでした。彼女も食べられる食材のみを使った手料理をみんなで作るという条件です。この提案を、彼女は快く了承してくれました。

ムスリムでも楽しめるホームパーティを開くことに

そのホームパーティーの準備は、まず彼女からムスリム(イスラム教徒のこと)の食事について聞き出すところから始まりました。お恥ずかしいことですが、私はそのとき初めてイスラム教では豚肉や鳥肉などの日本人にとっては当たり前の食材が食べられないことを知りました。普段、宗教について考えたり触れる機会のない私にとってはとても興味深く、不思議な気持ちになったことを覚えています。

その後も打ち合わせを続けた結果、彼女の郷土料理であるトムヤムクンを作ることになりました。そしてホームパーティー当日、友人5人が彼女の家に集まりました。早速みんなで手分けして料理に取り掛かりましたが、当然トムヤムクンを一から作った経験はなかったため、彼女に教えてもらいながら一時間ほどかかって完成しました。

部屋の中にはトムヤムクンの独特の香りが漂い、まるでタイにいるかのような感覚になりました。お腹が空いていた私たちは早速食べ始めましたが、日本人の私たちは一斉に顔を見合わせて「辛い!」と大慌て。そしてみんなで大笑いをしました。

それを見ていた彼女は一体何が起こっているのかわからない様子。「私たち日本人の口には辛すぎるよ」と伝えると、彼女はようやく状況を理解したようで「タイではこれが普通なのよ」と笑顔で話していました。

料理をする中で一番重要なポイントである味付けはタイ人の彼女に任せていたので、彼女の感覚からしたら普通の辛さで作ったつもりだったそうです。嘘偽りない本場の味に驚きながらも次第に辛さに慣れていき、最後はみんなで完食しました。このホームパーティーをきっかけに彼女の素顔が見られたようでとても嬉しかったです。

その後も彼女との交流は続き、大学を卒業する頃には国籍も宗教も違うことなど全く気にならないほど日本人の私たちと打ち解けていました。卒業後、彼女はタイに帰国。私は社会人となりそれぞれ別の道を歩んでいきました。

社会人になって二年目、初めて長期の休暇が取れたので「せっかくなら彼女に会いに行ってみよう」と思い旅行の計画を立てました。久しぶりに彼女に連絡を取ってみると、私のことを覚えており「予定を教えてくれれば空港まで迎えに行くよ」とまで言ってくれました。

久しぶりの再会・思い出のトムヤムクン

そして旅行当日、日本を生まれて初めて離れる興奮と級友に会える期待に胸を膨らませて日本を出国しました。タイに到着後、当時とまるで変わらない優しい笑顔で出迎えてくれた彼女と再会を喜び、互いに近況報告を済ませ、その後彼女は私のタイ観光に付き合ってくれました。

タイの容赦ない暑さに驚いていると「日本は寒すぎるのよ」と一言。今回の旅行で改めて本場のトムヤムクンを食べることができ、ホームパーティーの思い出を話しながらふたりで懐かしむことができました。出会いはたまたまかも知れませんが私にとってとても大切な友人ができたことが人生にとっての宝物だと思っています。