日本人より日本人しているインド人

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

日本人より日本人しているインド人

あるインド人との出会い

私は現在21歳の大学生です。私が日本人より日本人しすぎているインド人と出会ったのは、今から3年前のことです。

そのインド人とは、当時私が通っていた予備校のすぐ近くにある、彼が経営しているインドカレー屋さんで出会い仲良くなりました。私が彼のことを「日本人より日本人しすぎている」と思ったのは、私と彼が仲良くなり1人暮らしをしていた私の家に彼を呼んだ後のお話です。

その事件は私が彼にカレーを振る舞った時に起こりました。彼は、私がカレーを食べる時に(関西ではあまり珍しくもないのですが)ソースをかけるのを見て、「何でこのカレーにソースをかけるんだ!?私は日本人は細い味がわかると思って日本で店を出しているのに、なんでそんな大雑把なことをするんだ!」と言いました。その時の彼は、怒りや驚きという表情ではなくなぜか落胆している表情で、私のカレーに何もかけずに食べていました。私は彼に、これは関西ではあまり珍しくない食べ方で、私の父や母妹や弟もみんなソースをかけてカレーを食べるということを教えましたが、「本当にありえない。ソースをかけるならソースをご飯にかけて食べればいい。」とずっと落胆してそのまま家に帰りました。

カレーにソースをかけてはダメ?

その時の私は、彼が帰ってからも「落胆する意味が分からない。日本に住んでいるのだから日本の風習に従えばいい。彼が日本に出店した意味なんて知ったことじゃない。」と思い、彼に少し怒りを感じていました。というのも、自分がやった方法が日本での文化であり関西の文化だと思っているからです。彼が「自分の思っていた日本と違う」と言って勝手に落胆して帰っていくなど、とても自己中なように感じました。

その後はあまりそのインドカレー屋さんに足が向かなかったのですが、予備校の卒業を機に、彼に自分の進路を報告しに行こうと思い、彼のカレー屋さんに行きました。カウンターに座っていつも通り注文していると、彼がカウンターからひょっこり出てきて、私に申し訳なさそうに「実はあの後日本の市販のルーを使ってカレーを作りその上にソースをかけてみた。その味があまりにも美味しくて自分のカレーにもソースをかけるようになった」と言いました。

よく見ると、彼のお店の調味料棚にはソースが置いてありましたし、客席にもソースが置いてありました。私は彼に「日本人でもあんまりこの味を分かる人はいないと思うよ」と言い笑いましたが、彼も「日本は最高だね!やっぱり最高!」と言ってうなっていました。

その後彼は自分の偏見や感覚を取っ払うべく、日本のあらゆるものを試してカレーを作り、最終的に彼は醤油カレーというものを作りました。そのカレーはどす黒く、醤油と出汁、そしてインドからのスパイスで少し辛く味付けしたカレーで、なんと言うか日本ではあまり食べられないが日本版カレーというようなものでした。

私は大学に入ってからもたまに彼のお店に行ったりしていますが、いつも「日本人の感覚は素晴らしい。私はインドでカレーを食べ、日本でもカレーの店を出店しているが、ソースをかけるなどとはひとつも思わなかった。日本人のチャレンジ精神は本当に素晴らしい。日本は奥ゆかしく探究心に燃えている素晴らしい国だ」と言って国民性を褒めてくれています。

どんどん日本化していくインドカレー屋

結局彼の店には日本カレーの他にも富士山カレーや琵琶湖カレーなど日本にまつわるものがたくさんでき、最終的にはインドっぽい内装から日本ぽい内装に代わっていました。さらにはカレーを箸で食べるようになり、カウンターやテーブル席に箸を置くようになりました。現在、彼は手でカレーを食べていた時代を忘れ、箸でカレーを食べるようになっていました。スプーンすらも使わない彼の心意気は、まさに日本人よりも日本人ぽいインド人だと私は思います。