イギリス人の恋人の温度感覚

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

イギリス人の恋人の温度感覚

イギリス人の彼氏が日本に来たときの話

私は33歳の専業主婦です。20代の頃、留学でイギリスに渡り、今現在も在英です。これは私が22歳の頃付き合っていた、26歳イギリス人の彼の話になります。

その頃、日本食店でアルバイトをしていた私は、会計士として働く彼とパブで知り合い、付き合うことになりました。日本の文化が大好きで「一度は日本に行ってみたい」と話す彼を連れて、日本に一時帰国をしました。

私達が日本に行ったのは一月の寒い冬。温泉旅行などを旅の計画に取り入れ、とても楽しみにしていました。旅費節約のために温泉旅行以外は東京にある私の実家に滞在することに。私の家に着くなり彼は「こんな寒い家に日本人はみんな住んでいるの?」と目を丸くしていました。

日本の家が寒いという彼

私の実家はごく一般的な1軒家。ガスストーブとエアコンで部屋を温めていますが、基本はコタツでの生活で、エアコン等は電気代節約のため、冷え込む朝晩のみに使用していました。当然廊下はエアコン等も効いておらず、お風呂の脱衣所も寒いです。セントラルヒーティングで、どの部屋も快適温度に設定されているご家庭が多いイギリス。イギリス人の彼にとって日本の家は外にいるのと同じだ、とのことでした。そのくせ、外の気温が10度以下でも暖かいと言って、外出時は薄手のコートに下は半袖。しかもいつも少し汗ばんでいました。

それなのに、家に帰ると寒い寒いとブルブル震えてコタツに入りっぱなし。しかも背が高くてコタツの中で足をどう置いたらいいかわからないと手こずっている彼がとても可愛らしく思えました。イギリス人の彼曰く、日本人は様々な技術の開発が発展していて、生活をより快適にすべく常に努力をしているのに、何故住宅となると無関心になってしまうのかと首をかしげていました。

日本の家だって、イギリスのようにセントラルヒーティングを採用したり、家の壁にもっと断熱材をしっかりと取り入れれば、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるのに、とよく彼は言っています。確かに日本でも最近はお風呂場と脱衣場の温度差によるヒートショック等が問題視されるようにはなってきました。

私は今まで日本に住んでいて、冬は家の中でも寒いのが当たり前だと考えていたので、逆に彼のように冬は暖かく、夏は涼しく家で過ごしたい、といった概念がありませんでした。彼はもし日本に住むことになって家を購入するようなことがあれば、家の見た目等は後回しにして、まず断熱材をしっかり入れるんだと豪語していました。

彼が日本で感動したこと

そんな彼との温泉旅行で、彼はある日本技術にえらく感動をしていました。それがトイレです。私達が泊まったホテルのトイレは、便座が電気で常に暖かく保たれていて、自動で蓋の開け閉めがされ、便座から立つと自動でお水が流れる仕様になっていました。これほどまでに洗練されたトイレを見たことがなかった彼は大そう驚き、挙げ句の果てにはビデオまで撮っていました。これほどまでにトイレの技術が発達しているのに、何故家全体の快適さには無頓着なのか、彼はそこに日本人の住宅に対する矛盾を感じたそうです。

トイレの技術に感心した彼は、イギリスに帰国後すぐに彼の両親に彼が撮影した日本のトイレの現状を見せていました。彼のご両親もとても感心して、何度も何度も再生して映像を見ていたのが印象的でした。廊下もお風呂もどこもかしこも暖かいイギリスのお家。でも冬の時期、便座は座るとひやっとします。

日本から帰国した彼は、日本滞在中に便座ヒーターを買って帰ってくればよかったと後悔をしていました。そんなどこまでも家の快適温度を探求する彼を見て、思わずプッと吹き出しそうになったことを今でも覚えています。2週間ほどと短い日本滞在ではありましたがイギリス人の彼と同行することで、改めて日本の良いところ、少し改善すべき点が見え、得るもののある楽しい滞在となりました。