フランスよりも実は芸術的かもしれないとちょっと自慢になったこと

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

フランスよりも実は芸術的かもしれないとちょっと自慢になったこと

英国で知り合ったポーランドの友人

私は36歳で現在は専業主婦ですが、結婚前までは商社で輸出を担当する事務をしていました。

仕事柄、英語の勉強は必須だったので、少しまとまった休暇をもらうことができることになったとき、思い切って短期の語学留学をしたのです。ちょうど30歳になったばかりでした。

留学先はイギリス、現地の学校で同じ30歳のポーランド人女性と仲良くなったのです。
きっかけは共通の趣味だった「ビーズアクセサリー作り」、2人でいろんなお店をまわったりして楽しみました。

日本に帰国後も彼女とはずっとメールの交換などしていたのですが、ある時彼女が日本に遊びに来てくれたのです。知り合ってから5年、ちょうど私の35歳の誕生日に合わせてプレゼントと共に来日してくれたのでした。

七変化する日本語は、芸術的?!

日本の神舎仏閣などの「建築」に興味があるという彼女を連れてお寺巡りをいろいろと計画していました。
行先は京都、この日も朝早くからあちこち回って一旦京都駅まで戻り、さあまた次に行こうかということで電車に乗りました。

平日の昼間とはいえ、日本の電車の車内ではいろんな「車内アナウンス」があります。
このときも「身体の不自由な方やお年寄りには座席をお譲りくださいますよう~」というアナウンスが流れました。このアナウンスが、張り切って日本語も勉強しようとしていた友人の疑問のきっかけになってしまったのです。

「ねえ、今「おとし」って言ったわよね」という友人に「うん、どうしたの」と聞き返しました。
カバンから小さなノートを取り出した彼女、「おとし」って言うのは「落とす」ってことよね。」と真顔で聞きます。

覗き込むとノートにはなぜか「だるま落とし」の書き込みがあり、ご丁寧に手書きのダルマさんのイラストまで添えられています。

車内アナウンスを聞いた彼女、全文の意味はわからないまでも「おとし」の部分だけは耳に残ったようです。何か落ちてくるのか・自分が知らないどんなルールが日本の電車利用にあるのかと不安に思ったのかもしれません。

「あ、この「おとし」は落ちるの「おとし」じゃなくて「年を取った」って意味よ。」というと困ったような顔をしました。「じゃあ「お年玉」の意味は何」と聞いてきます。
え、ここでお年玉って、と聞かれた私も戸惑ってしまいました。

落ち着いて考えれば「お年寄り」の「おとし」と「お年玉」の「おとし」は違います。
年齢を表す言葉と1年の始まりの意味の年、それに加えてだるま落としのおとしも加わって説明するほうの私も混乱したわけです。

日本に生まれ育った日本人の私が「お年寄り」のおとしと「お年玉」や「ダルマ落とし」のおとしの違いに悩むということはありませんから。

四苦八苦して説明した私に「ありがとう」と言ってくれつつも友人はため息をつきながら「日本語にはたくさん「おとし」があるのね」と困っていました。さらに話を聞くと日本語を勉強していると「音にすると同じ発音をするのに意味が全く違う言葉」や「音を表す言葉」がたくさんあって驚いたのだそうです。

「西洋の言葉にだって雨や風を表す表現はいろいろあるけど、日本語みたいに一つ覚えてもまた違うのがすぐにでてくる、といったことはない」と言います。

「日本語って情景が目に浮かぶみたいな表現が多くて芸術的よね」との友人の言葉に、ちょっと自分を褒められたように思いました。

さらに、興味の対象は・・

さらに彼女は続けて「言葉だけじゃなくて日本のお手洗いも芸術的よね」と言います。
あるレストランでのこと、自動で便座のフタが開くトイレ・ウォシュレット・音消しの装置に感心したそうです。

これは日本人でも田舎住まいの私も感心するものですから外国人の彼女が驚くのも無理はないかもしれません。

音消しの装置は面白くて思わず何回も押してしまったと笑っていました。とはいえ最初は「日本人女性はトイレの水を無駄使いし過ぎる、個室から水の流れる音が途絶えることがない」と思っていたそうです。

「以前ニュース記事に、トイレで食事をする学生の話を読んだけれど、あんなにきれいなトイレならそれもアリかなって思うわ」との話には苦笑いしてしまいましたが。

彼女も今では結婚し、今度は旦那様と来日してくれる予定です。
「すべてが芸術的な日本」を楽しんでくれればいいなと思っています。