ヨーロッパ人が教える日本!

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

ヨーロッパ人が教える日本!

北欧の娘さんに、日本語を教える

5年ほど前のことです。留学を終えてフリーターをしていた20代半ばだった私は、知人の紹介で留学生に日本語を教えることになりました。日本に来たばかりの北欧娘3人を相手に、日常会話(本当に初歩の挨拶)を教えて、ついでに観光もしてくれとの依頼でした。

初めて出会う彼女たちは、20代前半で、国籍はギリシャ・フィンランド・ノルウェーでした。日本のことは漫画やテレビを通じて知っているものの、日本に来るのも日本人と接するのも初めてという方々です。日本語はまだ誰も分からないので、共通語として英語を用いながらのコミュニケーションとなりました。

NGO団体の事務所をお借りして、まずは日本語の授業が始まりました。テキストは彼女たちが持ってきたものを使用するので、当然ながら事前準備の時間はありません。

「どうぞ」「どうも」

ドキドキの第一課の内容は、

「どうぞ」 「どうも」

ん!?? この時点で、私の予想は裏切られました。
「こんにちは」「はじめまして」から、会話が始まるのではなかったのです。

図解では、「どうぞ」と「どうも」だけで会話が成立するシーンが並べられています。

エレベーターで「どうぞ」「どうも」、プレゼントを渡すときに「どうぞ」「どうも」
道で出会っても「どうも」「どうも」……。

確かに!
日常生活で「どうぞ」と「どうも」を使う機会は、私たちが思っている以上に多いようです。

嬉しそうに、「どうも」「どうも」と挨拶を繰り返す彼女たち。
初めて覚えた日本語の挨拶は、『短くて覚えやすい。ただし、紛らわしい」とのことでした。

その後、第2課で「こんにちは」と「さようなら」も教えました!
しかし、最初に覚えた言葉というのは、脳に残りやすいものらしく、彼女たちの中では「どうぞ」「どうも」の方がヒットしていたようです。

ご存知でしょうか、ヘタリア・・??

定着したかはさておき、ひとまず日本の標準の挨拶も教えることができたと自己満足の私。一息ついたところで、授業は雑談(という名の休憩)に入りました。

彼女たちの会話に、頻繁に『ヘタリア』という単語が登場するようになりました。
曰く、「アジアの歴史はほぼヘタリアで学んだ」「ヨーロッパではヘタリアは超有名」とのことです。

私にとっては、「???」の単語です。しばらくは知ったかぶりで話を合わせていました。なにかヨーロッパで有名な団体かアプリの名称かと思っていましたが、どうやら話はどんどんずれていきます。

とうとう私は、意を決して彼女たちに尋ねました。
「ねえ、ヘタリアってなに?」

その瞬間、彼女たちの目が本当に文字通り丸くなったのです。
「えぇ~~~っ???」「本当に?」「日本人なのに、どうして知らないの?」
「オーマイゴッド…」

さんざんな言われようです。
あんまりじゃないかと若干腹を立てながらも、落ち着いて丁寧に彼女たちに『ヘタリア』について教えてくれるように頼みました。

最終的には、携帯でのウェブ検索も行いながら理解したところによると、各国の『国』をデフォルメしてキャラクター化した日本発祥のウェブ漫画のことでした。

例えば、イギリスはアメリカをライバル視している、フランスとイギリスは喧嘩するほど仲がいい、日本とドイツとイタリアは昔同盟を結んでいた、韓国は日本を羨みながらも恨んでいる…。

かわいらしい絵柄で、相関関係を見ていれば確かにデフォルメはあるとしても、勉強にはなるのかもしれません。
そういえば、私たちも「聖徳太子」とか「マザー・テレサ」とか、「関ヶ原の合戦」とか、子供のころに歴史を勉強するときはまずは漫画から入っていたかもしれません。

まさか、ヨーロッパの歴史の授業で、日本のウェブ漫画が使われているとは思いませんが、彼女たちからすれば「知らない人はいない」ほど有名だとのことです。

よもや、海外の人から日本の文化を、しかも漫画を通じて教わることになるとは思わなかったので、私にとっては忘れられない衝撃的な事柄でした。