リョカンのフトンがかたづけられた!!

クスッ、ほっこり、外国人あるある話

リョカンのフトンがかたづけられた!!

以前、観光案内所でガイドをしていた時のエピソードです。

観光案内ですので、もちろん沢山の観光客、外国の方もいらっしゃいます。
入ってきた瞬間から怒っているのがはっきりとわかる場合も少なくありません。
怒りの矛先が、なぜか案内所になるのです。
さしずめよろず相談所、いや、町のクレーム対応窓口です。

旅館の布団が消えていて、お怒りのご婦人が!

その日のお客様はイタリアから来たというおばさま。情熱的な方々が多いので、しゃべる声が大きいことにはあまり驚きません。
その方も御多分に漏れず、大きな声で入ってきました。
そして、あなたたちが悪いわけじゃないの。わかってるわ。でも聞いて!!だれかに聞いてもらわないとこの気持ちが収まらないの!!とのこと。

なにがあったのかとよくよく聞いてみると、
リョカンに泊まってたんだけどね、とても素晴らしいリョカンだったんだけどね、タタミの部屋にフトンをしいてね・・・
でも、朝ご飯を食べに別の部屋に行って、戻ってきたらフトンが無くなってた!!!というのです。

最初は何に怒ってるのか理解できませんでした。
彼女いわく、朝ご飯を食べて戻ってきたら、また部屋でリラックスしようと思っていた。それなのにフトンがなかった。なぜフトンが無いのかとリョカンの人に聞いても、片づけたといわれるだけで、よくわからない、と。

私もよくわからない、と思いました。
片づけたのがなぜいけないのか。

あー、布団にゴロゴロしたかったのねー。でも、残念ですね、それがリョカンのルールですよ。置いといてくださいと言えば、置いといてもらえることもあるけど、その時間に片づけるのがルールになってるところもあります、と。

しかし彼女の怒りは収まりません。
なぜだ?なぜ片付ける?の一点張りです。
こっちも意地になってしまいます。
「ルールです。それがリョカンのルールです。それが日本のルールです。
最初に片づけないでというべきでした」
「いや、まさか、片づけられるとは思わなかった」
「では残念でしたね」
堂々巡りです。

ああっそうか!日本人だからこそ気づかなかったこと。

しかし彼女はあいまあいまに、いや、わかってるのよ、あなたたちに言っても無駄だということは。あなたたちが悪いのではないこともわかってるのよ、と。

しかし怒りはおさまらないようです。なんとかお引き取り願いましたが、なんでそこまで怒るのか、そんなに食後にゴロゴロしたかったのか、まぁ、ゴロゴロしたい気持ちもわかるけど・・・

・・・ふと、そうか、ベッドなら一生そこにあるもんね、と気づいたのです。

そうです、それがホテルなら、ホテルのベッドなら、たとえ何かの手違いでベッドメイキングがチェックアウト前に来たところで、ベッドはそこにあるのです。またゴロゴロできるのです。もちろんチェックアウト前ならベッドメイキングに来ることもないでしょう。連泊しない限りは。
そうか、ホテルの部屋からベッドが消えたと思ったら、そりゃあ驚くよねー、と。

もちろん私自身、ホテルにも旅館にも泊まったことがあります。海外に住んでいた経験もあります。しかし、そこには気づきませんでした。目からうろこでした。

リョカンでフトンが片づけられるということがどういう意味なのか。
日本人が、あー、もう片付けられちゃったかー、残念、といいながら畳にゴロンとするのとはきっとわけが違うのでしょう。もしかしたら畳にはゴロンとできることにも気づいてないのかもしれません。

その女性が帰った後でいろいろと思いを巡らし、あぁ、もう一度説明をしてあげたい、そんなに怒らないで、そんなことで日本を嫌いにならないで、畳にゴロン、してもいいんですよ・・・と、なんなら一緒にタタミマットでゆっくりお喋りしたい、そう思った出来事でした。

あの時のイタリア人のご婦人、その後日本をどう思ったのか、旅行の感想をぜひお聞きしたいものです。